[ 2012.03.30 : note]

猫を抱いて象と泳ぐ

小川洋子さんの本。

なんて愛らしいタイトルなんでしょう。
読んでみるとその意味がわかり、もっと素敵だとわかります。

近年読んだ本で一番好きかもしれない。優しくて悲しくて美して、とっても優しい。

「小川洋子の本はなんでもおもしろい」と友人に勧められたり、映画の『博士の愛した数式』がすごくおもしろかったので、
気にはなっていたけど、ほかの作品のタイトルや装丁にあんまり魅かれず、今まで手に取らずにいました。

何かで読んだか聞いたんだったか、 「本当に寂しいときには、人は寂しいとは言わない」 という小川さんの言葉を知って、ものすごく共感してしまい、こういう感性を備えている人の書いたものを読みたいと強烈に興味がわき、図書館に行くと、タイトルも装丁も好きなこの本がありました。

少年リトルアリョーヒンとマスターの年の離れた友情の物語。リトルアリョーヒンも彼の周りの人たちもほんとうに優しい。
私は、本を読みながらあんまり映像を思い浮かべないのに、この本だけは、お菓子の甘い香りに満たされた回送バスの中でチェスをするリトルアリョーヒンとマスターの幸せな姿が頭の中にはっきりとあります。

物語に少しも余分なものがなく、すべてが美しく、意味をもってつながっている。まるでリトルアリョーヒンの棋譜のよう。
どうしてこんなに素敵な物語を紡げるんだろうとため息が出てしまう。

PDR_0003.JPGのサムネイル画像

これからも何度も何度も読みたい本。今度は図書館じゃなく、買って読みたいと思います。
出会えてよかった。